【VRで教育が変わる】元素を並べた「核図表」を空間体験。面白過ぎる。『立体核図表』ワールドを紹介させて欲しい。~VRと教育の新しい可能性をここに見た~
巨大な「核図表」の世界を空間体験。『立体核図表』の世界で、元素・原子を体感しよう。
お疲れ様です。
へちやぼらけです。
Vtuber評論家です。
「VRアカデミア」(VRアカデミア)というVRと教育の融合を目指す未来に生きている団体が、『元素を並べた「核図表」』を巨大に3Dモデル化。そして、この世界に誰もが入り込み、元素・原子を空間体験できるよう、無料で公開しました。
このVR空間は『立体核図表』と名付けられています。現在、『立体核図表』は、VRChatと呼ばれる”他のユーザーとコミュニケーションをとりながら、VR空間内を自由に動き回れるVR版のSNS”にて無料公開されております。(VRChatとは (ブイアールチャットとは) [単語記事] - ニコニコ大百科)
今回は、この紹介をしたいと思います。俺は、この『立体核図表』にVR×教育の明るい未来を見た。
【告知】立体核図表ワールドがパブリック化されたよ~!!
— 番匠カンナ@バーチャル建築家 (@Banjo_Kanna) September 7, 2018
原子核物理の「核図表」を空間体験できるワールドで、宇宙のはじまりから原子核が合成されていく様子が超わかる!動く原子核モデルもげんしかく占いもあるよ!"Table of Nuclides VR"で検索かけてね~#VRChat #VRアカデミア pic.twitter.com/stfEY5YX9Q
『立体核図表』の公開と当日にtwitterにて報告。このツイートは200回以上リツイートされ、大きな反響を生んでいる。
◇核図表って何??
※この章は、『核図表』ってそもそも何?な方へ向けて記事を書きました。「核図表、知ってるよ。」という化学大好き兄貴の方は、この章を読み飛ばしていただいて構いません。後ほど『立体核図表』の説明をいたします。
「核図表ってなんだよ…」って方も『周期表』はご存知のはず。周期表は性質の似た元素同士が集まるように、規則的に元素を並べた表です。周期表は元素の性質を理解する上では、超優秀な表です。
しかし、実は、水素元素(H)1つとっても、重たい水素元素もいれば、軽い水素元素もいたりと様々…。周期表って、元素を全て網羅できているようで、実はできていないのです。元素の網羅性という意味では、不十分な表なんです。
これに対し、核図表では質量(厳密には、中性子の数)の異なる同元素も区別して表にまとめます。具体的にどうまとめるかと言うと、縦軸にスイ・ヘー・リー・ベー・ボ・ク・ノ・フ・ネ…の順番で原子番号順に並べ, 横軸方向に軽い順(中性子の数順)に並べます。
1つの元素に対して、その重さにも着目し表にまとめることで、現実に存在しえる全ての元素(原子)をx軸, y軸で網羅的に並べたものが核図表です。
(お借りしたサイト:https://twitter.com/yoshikoba113/status/831741242560151552)
例えば、H(水素)。図の左下をご覧ください。同じ水素でも、その重さに着目することで、軽い順に1H<2H<3Hと区別することができるんですね。
◇VR-『立体核図表』
今回紹介する『立体核図表』では、x軸,y軸で構成された平面の『核図表』に、更にz軸(高さ)を与えています。
z軸は、その元素が持つ結合エネルギーの大きさ(陽子と中性子の結合の度合い)です。元素の持つエネルギーの大きさ。それ即ち、その元素の変化のしにくさ。『立体核図表』では、底に行くほど結合エネルギーが高くなっている。
逆に、相対的に低いエネルギーを持つ元素は、長い年月を経て元素固有の安定的な状態に向かって、底へ底へと向かう。
このx軸, y軸, Z軸を持つ3次元空間をVRで再現したのが『立体核図表』です。
◇いざ、『立体核図表』へ
ということで、VRChatを起動し、立体核図表の世界に行ってみました。VRChatのホームからメニュー画面を起動し、「Table of Nuclides VR」と検索をかける。
赤い丸で囲ったのが『立体核図表』。どんな世界が待っているのか…。楽しみ過ぎる。
そして、俺はGOボタンを押し『立体核図表』の世界にお邪魔した…。
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画面が切り替わるとそこは、宇宙空間の様に神秘的で非現実な空間がある。どうやらここは、1H(水素元素)。始まりは、結合エネルギー0の場所からだ。というのも、1Hは陽子1つで中性子を持たないため、そもそも結合していない。
下を見下ろすと、そこには広大な核図表が姿を現す。美しい、美しすぎるぜ。思わずを足を止めて、目の前に広がる幻想的な世界にうっとり。
赤と青のブロック。そして、境界を引くようにまっすぐと並ぶ黒いブロックを確認できる。 黒いブロックは『立体核図表』の底の底。安定核を現しているようだ。赤と青の不安定核たちは、放射線を放出しながら、より安定な状態に変化していくそうだ。※↓の画像を参考。
赤のブロックに刻まれた元素は、中性子が陽子に変化する「β+崩壊」を起こしながら安定核に近づく。青は、陽子が中性子に変化する「β-崩壊」を起こしながら安定核に近づくらしい。
ちなみに、始まりの1H(水素)のフロアは踊り場になっており、踊り場に配置されている様々な展示物を鑑賞することができる。また、”立体核図表の歩き方ガイド” も紹介されているぞ。
化学でおなじみの周期表も収録されている。VR空間で化学のお勉強もできますね。
下の画像はちょっとマニアック。K核, L核, M核…の電子配置と軌道モデルが書かれている。『立体核図表』の世界に入り込む前に、大学化学をここで総復習できる。
さて、勇気を出して、始まりの1Hの場所から飛び降り、結合エネルギーの大きな元素達を見てみよう!
ちなみに、誇張や冗談ではなく、飛び降りる時はガチで勇気がいる。VRと分かっていても脳はこれをリアルと錯覚してしまうのだ。私は下に飛び降りる際、怖すぎるため目をつぶることにしている。
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下に飛び降りてみると、化学の授業で習った様々な元素を確認することができる。下の画像は、37P(リン元素の核図表)の上に立ち、Cl(塩素)を眺めている時の様子。
Clの同位体がちゃんと並んでいることを確認できる。ミクロでみればちゃんと核図表になっていることがわかるぞ。「ああ、俺は今、核図表の世界にいるんやなって…。」
同じCl(塩素)という物質でも、重さの違い(=中性子の数の違い)によって、35Cl , 36Cl, 37Cl・・・といったように分類されているな。
そして、こちらは逆サイド。赤のブロックが広がっている。丁度、遷移元素を見渡している風景を画像に収めてみた。
谷底から上を見上げた時の風景。そびえたつ1族(Li, Na,K…)の山々。悪魔城の様な威厳すら感じる。
◇α崩壊が一目で
巨大な核図表を空間体験できる『立体核図表』。これだけでも十分満足だが、そのほかに、”元素が変化してく様子を視覚的に分かり易く理解できる仕掛け”が数多く用意されている。「α崩壊系列」「核分裂反応」「核分裂反応」「s過程」などなど立体的・視覚的に観察することができるのだ。
記事の都合上、ここでは特にα崩壊について紹介したい。『立体核図表』に存在する【α崩壊系列】と書かれた箇所に手をかざし、決定ボタンを押してみよう。
すると、ピンクとオレンジのボールで表された「α崩壊系列」が浮かび上がってくる。
もっと近づいて、ミクロな視点で眺めてみよう。下の画像は、240U(ウラン)。なだれ落ちるようにNP, Puと変化していく様子がピンクの球でマーキングされている。α崩壊の過程が一目瞭然だ。
ピンクの球を追っていくと終点にたどり着く。α崩壊の行きつく先は、Pb(鉛)だ。
こちらは、【ビッグバン原子核合成】の過程。オレンジの線がそれだ。物質の存在しない「無」の状態から原子が生まれ、変化する様子が描かれている。何とも粋な演出。
こちらは、核分裂反応。
◇他にも粋な演出が色々
その他にも『立体核図表』には、訪れた人を楽しませる仕掛け・展示物が様々用意されている。
さて、突然だが、「原子を360度舐め回すように眺めたことがあるか!」とあなたに問いかけたい。立体核図表の世界には、なんと原子を観察できる面白ギミックが存在しているのだ。
下の画像は、原子を模したVRモデルだ。紙面でしか見たことが無い原子モデルを立体的に眺めることができる。これには感動だ。顔を突っ込んで原子核を眺めてみるもよし。勿論、顔を突っ込めば原子の中に入ることだってできちゃうのだ。
原子モデルは、化学理論に沿って忠実に再現されている。K核、L核の周りを電子がぐるぐると公転している。電子は「上向き」・「下向き」にそれぞれ回転しているぞ。
◇最後に
『立体核図表』の世界。いや、これマジで面白過ぎる。私自身、時間を忘れて2時間ほどこの世界に入り浸ってしまった。
『立体核図表』は無料公開。無料でこのクオリティ。言葉や文章で直接語られることはないが、この世界の作り込みの高さを見るだけで、VRアカデミ職員の化学愛がガンガンに心を揺さぶってくる。
最後は、この『立体核図表』の制作者の方々へ向けて、感謝の言葉で締めくくりたい。
原案・ワールド制作:番匠カンナ先生
原案:バーチャルデータサイエンティスト アイシア先生
らくとあいす様
せがわ様
データ提供:Ryo Taniuchi様
マジでありがとうございました!とっても楽しかったです!!